ヤング・エッセイ

スモールワールドにビッグオーシャンな随想録です

いえすさん

アルバイト先に、とても素敵な女性がいる。

そのひとは、歳は自分より下で、勤務先では、先輩にあたる。責任感がつよくて、でも明るくて、お茶目で、とってもチャーミングだ。どうして彼女が魅力的なのか、考えてみたのだが、いや、考えてはいないのだが、ひとつ分かったことがある。
彼女はなにも臆することなく、「思い出をつくろう」と言うのである。
なんだかその言葉のうらで、半ば、人生の時間という巨大な虚しさを認めていて、そのうえで、そう、言っているように見えた。
彼女は関わり合いのあるひとの、誕生日やお祝い事を抜かさなかったし、何ヶ月遅れてでも機会があれば祝おうとした。企画事にはいつも一番積極的に関わっていた。

巨大な空腹感を、どうやって誤摩化すか、それとも貪欲に満たそうとするのか、その対応の仕方が、ひとの「性格」と呼ばれるものなんだと思った。私なんかは、毎日ちょっと湿気たツラをすることで、イーブンにしようとしているが、彼女のそれは、いちばん正直で勇気あるもののようだった。ボツボツと空いているたくさんの穴を、ぎりぎりのところで躱しながら、走っている。
勇ましいけど、切ないような、かなしいような、でも捨てることが出来ない最後の希望の光みたいに、尊いのだ。同時に、そのはりつめた細い光が、今にも切れそうで、危うい。その危うさがまた、魅力なんだろうとも思う。

そのひとの誕生日は、クリスマスなのだ。
やっぱり、ってな具合である。