ヤング・エッセイ

スモールワールドにビッグオーシャンな随想録です

N山先生

そういえば、

そういえば、

穂村弘さんの「世界音痴」の表紙の写真を見ながら、誰かに似ていると思ったら、高校時代の数学の先生に似ている。先生の方がだいぶ、野暮なおじさんだったが。。

頭のおかしい、心がひねた先生だった。数学の先生なのに、日焼けしていて、腕が太くて、筋肉質で、ゴツゴツしていていた。それでいて、白衣に、フレームの大きな古いデザインの眼鏡という、インテリ風の格好だった。

なにが「おかしい」印象を与えていたのか、考えると、彼の「道徳」が歪んでいた。彼が生徒に与える無用な攻撃があった。彼は、彼がホームルームを受け持つクラスの悪口を、別のクラスで何度となく言うのであった。「君たちは賢いなあ。うちのクラスの連中には、こんな問題分からないからね。」といった具合に。

「平等」「多様性」「個性」の、「尊重」。これが私たちが受けてきた、道徳教育の建前だ。実際には、レベル別に「クラス分け」があったし、何度となく受ける模試には、順位があった。それはそれで、別に良かった。だが、「道徳的には」違反である。

その先生は、みんなが言わないうちに受け入れている「レッテル」を、積極的に、分かりやすく生徒に伝え、助長した。そして、先生は、男子より女子が好きだった。特に頭が良くて顔の可愛い女子を気に入っていた。その姿は清々しかった。

彼が担任をしているクラスの、特に男子からは、明らかに不評だった。だが、そのクラスより「上」のクラスの女子からは、あだ名をつけられ、気に入られていた。

かくいう私も、その先生のことは嫌いじゃなかった。

だから、私の道徳も、口には出さないけれど、例外なく、歪んでいる。それはそれで、別に良かった。ただし、その道徳は、例外なく、自分に対しても、大事な人に対しても、向けられている。